コンデンサーを通り抜けた紡毛カードからは紡績にすぐに使用できるロービングが多数作られます。
紡績の準備
通常、洗い上げウールに含まれる残留グリースの量は重量比約0.3%から0.5%です。ウールグリース自体が良質の加工潤滑剤でもありますので、これは好都合なことです。紡毛システムの場合には、梳毛システムと比較してはるかに多量の合成加工潤滑剤が用いられます。この比率は実際のウールのブレンド率により異なり、例えば、ラムズウールブレンド (4%から5%) とシェットランド (8%から10%)等と4%から10%の範囲で幅があります。加工潤滑剤の量を増やす目的は、カーディング処理工程で落下し、機械の下に蓄積する短繊維の数量を減らすことにあります。
紡毛カード機は梳毛糸用のとは異なります。コンデンサーを通り抜けた紡毛カードからは紡績にすぐに使用できるロービング(圧縮されたスライバーの細い撚り糸)が多数作られます。最悪のカードは厚いカードスライバーを生成しますが、短繊維(ノイル)およびバリやシードなどの残留汚染物を除去するためにコーミングを経なければなりません。
精錬プロセスを通じた目的のひとつは、繊維の絡み度合いを最小限に抑えることにありますが、一定程度の絡みは常に発生します。結果として、洗い上げルースウールには絡まった繊維の塊やくずができる傾向があります。
カーディングの目的と目標には以下のようなものがあります。
- 絡まった繊維の塊をほぐし、個々の繊維に分ける
- 全ての繊維を互いに平行にする。
- 混合で繊維をさらに混ぜ合せる。紡毛カードは通常二部で構成され、その間にクロスラップ機またはスコッチフィードと呼ばれる機器があります。この機器はカーディングされた網をつかみ、回転させて90度の角度に据え、カードの2番目の部分に投入するためのものです。この働きにより、ウールをより適切にブレンドし、横方向の移動を (カーディング機の片側からもう片側へ)除外することが可能となります。
- 植物質 (種子や草等)や、汚れとほこり等の残留不純物を最大限除去する。
- 単位範囲当たり重量において均一な網を形成する。
- 紡績に使用可能な圧縮されたロービングの撚り糸を形成する。
カード(カーディング機)は、ピンで覆われ、水平に配置された一連の回転ローラーまたはシリンダーで構成されます。ローラーまたはシリンダーの一部は別の方向 - 時計回りまたは反時計回りに – 回転し、他のものは同じ方向に回転します。一部は同じ速度(RPM)で回転し、他のものは異なる速度で回転します。直径が同一のものもあれば、異なるものもあります。同様に、ピンにも密度、長さや方向が同一のものと異なるものがあります。
こうした多様な構成によりウールのカーディング機通過時に様々な種類の機械的作用が起こり、上述の目標を達成します。こうした主な機械的作用をウールが機械を通過する順に並べると以下のようになります。
- 繊維の水平化と短繊維の除去に寄与するウールの機械投入時のコーミング動作
- 繊維の塊をほぐし、徹底的に繊維を混合して均一な混合物を生成するカーディング動作
- ウールをさらにブレンドし、横方向の変動を最小化するためのクロスラップ動作
- カーディング動作と同時に作動し、混合、繊維の水平化と不純物除去を補助するストリッピング動作
- 質量の等しい均一な繊維の網を作る玉揚げ動作
- 繊維のさらなるブレンド、並列化と不純物除去のためにカーディング動作と同時に行われるストリッピング動作