洗い上げられたルースウールを待ち受けているのは製造の次の段階、トップ作りです。トップ作りとは梳毛システムによるウール製造固有のもので、ウール・システムでは行われません。
紡績の準備
トップ作りの段階では、ウールが糸に変わる紡績プロセスに不可欠な準備を行い、最終的に以下のような状態を確保します。
- ウール繊維がブレンドされ、均一な混合物となっていること
- 全ての繊維が互いに平行になっていること
- 短繊維と残留不純物が除去されていること
- スライバー(ウール繊維の連続した糸)の単位長(グラム/メートル)当たりの重量が全体を通じて均一なこと。
トップ作りのプロセスは、カーディング、ギリング、コーミングの3つの主要ステップから構成されています。
カーディング
カーディングする前に、正確な量の合成処理潤滑剤および水を一緒に混合し、ブレンド及び調合されたルースウールに適用します。潤滑剤の目的は、繊維と金属の摩擦を減少させることであり、水は静電気の形成を減少させます。いずれかがカーディング処理中に発生すると、過剰な繊維破損を招き、処理効率を低下させる可能性が高くなります。
ウールグリース自体が良好な加工潤滑剤であるので、精練ウール上に残る残留グリースの量は重量比約0.3%〜0.5%で、実際好都合なことです。
実際のウールグリースの含有量を考慮すると、梳毛システムの効率的な処理に最適な量まで追加すべき処理用合成潤滑剤の量は総脂肪量の%ベース(%T.F.M) で0.8% +-0.2%となります。
精練プロセスの目的の1つは繊維の絡み合いの程度を最小にすることですが、一定程度の絡みは常に発生します。
結果として、洗い上げルースウールには絡まった繊維のクランプやくずができる傾向があります。
カーディングの目的と目標には以下のようなものがあります。
- こうしたクランプをほぐし、個々の繊維に分けること
- 全ての繊維を互いに平行にすること
- 短繊維を除去すること
- 混合で繊維をさらに混ぜ合せること
- 植物 (種子、草、いが等)、汚れとほこり等の残留不純物を最大限除去すること
- 単位範囲当たり重量において均一な網を形成すること
- 網をカードスライバーと呼ばれる一定の長さの繊維に圧縮すること
カーディングの成功度は、上述の目標を満たし、起こりうる繊維の破れ、鈎状繊維 (真っ直ぐでない鈎状の繊維)とネップ (ウール短繊維の非常に小さな塊)をいかに最小限に抑えるかに左右されます。
カード(カーディングマシン)は、ピンで覆われ、水平に配置された一連の回転ローラーまたはシリンダーで構成されます。ローラーまたはシリンダーの一部は別の方向 - 時計回りまたは反時計回りに – 回転し、他のものは同じ方向に回転します。一部は同じ速度 (RPM)で回転し、他のものは異なる速度で回転します。直径が同一のものもあれば、異なるものもあります。同様に、ピンにも密度、長さや方向が同一のものと異なるものがあります。
こうした多様な構成によりウールのカーディングマシン通過時に様々な種類の機械的動作が起こり、上述の目標を達成します。こうした主な機械的動作をウールが機械を通過する順に並べると以下のようになります。
- 繊維の水平化と短繊維の除去に寄与するウールの機械投入時のコーミング動作
- 繊維のクランプをほぐし、繊維を混合して均一な混合物を生成するカーディング動作
- カーディング動作と同時に作動し、混合、繊維の水平化と不純物除去を補助するストリッピング動作
- 質量の等しい均一な繊維の網を作る玉揚げ動作
- 網をつながった一定の長さのカードスライバーに変える凝縮動作
ギリング
ギリングの一連の工程は、コーミング段階の前 (カードスライバーに)と後(コーマスライバーに)に施され、その目標は次のようなものです。
- ウール繊維を更に混合し、均一な混合物とする
- スライバーに繊維を更に平行に揃える
- その後の処理段階での繊維の破れを最小限にするため、カーディング処理でできたフック状繊維をトレーリング位置等最善の方向に確実に配置すること
- スライバーを通して線形加重 (メートル当たりグラム) を均一にすること
このうち後者は、機械に投入されるスライバーの線形加重を継続的に検知し、それに従い機械の速度調節を行う自動水準補正機能を備えた特殊なギリング機にウールを少なくとも一度通すことで達成できます。例えば、機械に投入されるスライバーの重量が大きい場合には機械の速度が大きくなり、逆の場合には小さくなります。最終的に、機械から排出されるスライバーの線形加重(メートル当たりグラム)は長さ全体に渡り均一となります。
ギリングマシンはフィード(または背面)ローラーとデリバリー (または前面)ローラーの2つの回転ローラーを備えています。これらのローラーの間には移動式ピン付きコームを備えたベッドがあります。
デリバリーローラーは常にフィードローラーよりも速く(RPM)動作するよう設定されており、ローラー間の速度の相対的差異率はドラフトと呼ばれます。ドラフトは、ギリングマシンから出現する線形加重(メートル当たりグラム) を決めることにより調整することができます。
フィードローラーは多数のスライバーを機械へ投入します。デリバリーローラーはスライバーをつかみ、移動式コームのベッドへ通します。繊維の塊はコーミングすることにより、シングルスライバーとなって機械から排出されます。
コーミング
梳毛システムで羊毛が梳かれ、高品質のウール糸の製造の場合には、より良い品質の糸を確実に製造するために、2回梳かす(再コーミングと呼ばれる)。
コーミングにおける目標には次のようなものがあります。
- 残っていれば、後の紡績作業中の効率低下、衣服の最終製品の外観不良(平滑性の少ない布帛)、磨耗性能(ピリング)の両方をもたらす、ノイルと呼ばれる短繊維を除去する
- ネップ(繊維の非常に小さな塊)の除去、その大部分はカーディング操作中に形成される
- 残留植物片 (いが、種子、草等)などの除去
ノイルとネップは無駄になったり、捨てられることはありません。 それらは紡毛システム上で処理するために売却されます。
短繊維、ネップ、および植物性物質を含むカードスライバーは、コームまたはコームマシンに投入され、除去されたコームスライバーの形で機会から排出されます。
コーミングマシンの動作は断続的で、目の細かい一連のコームによる繊維束のブラッシングもこの過程に含まれます。
一連のニッパーローラーがコームされた長繊維のみをつかみます。その後、長繊維の束は既に排出された束の上に重ねられ、新たなコームライバーとなります。短繊維は廃棄されます。